こんなお悩みを解決します。
- 本記事の内容
・フランス人は病欠に有給を使わない
・病欠時の給与保障は雇用主の義務
・日本人が休みを取らない理由
- 本記事の信頼性
2019年から、働き方改革法案の成立で、有給休暇の取得が義務化されましたね。
有給休暇の取得率が世界で最下位の日本と、取得率100%のフランスでは、何が違うのか、非常に疑問に思うところですが、フランスでは、病欠で有給を使わないことも要因の一つになっているのではと思います。
日本とは対極にあるように見えるフランスでの考え方を知ることで、新たな発見があるかもしれません。ぜひこの記事を最後まで読んでみて下さい。
フランス人は病欠で有給を使わない
フランスでは、病欠には有給は使いません。なぜなら、病欠時には社会保険事務所と雇用主からの補償があるからです。
病気で会社を休む場合には、かかりつけ医によって発行された、病欠証明書(Arrêt de travail)を会社と社会保険事務所に送付することで、医師によって指定された期間を休むことが出来ます。
病欠4日目から、社会保険事務所から病欠手当が支給され、雇用主はそれと合わせて給料の6割から9割が従業員に支払われるよう補填します。病欠のはじめの3日間は、社会保険事務所の手当ては支払われませんが、企業によっては最初の3日分の給料を支払うところもあります。
補償を受ける従業員側の義務として、かかりつけ医に証明書を発行してもらってから、48時間以内に送付することが義務付けられています。通知をおこたったり、または遅れたりした場合には、従業員の過失および無断欠勤と見なされて、補償は受けられません。
病欠時の給与保障は雇用主の義務
病欠時の給与保障は十分にされるので、よほどの大病でなければカバーされるシステムになっています。
社会保険事務所からの病欠手当は、病欠4日目から最長3年間、給与の約50%が支給されます。
また、雇用主は、勤続1年以上の従業員が病欠した場合、社会保険事務所からの病欠手当を補完する形で、最長90日間は給与の90%を、その後90日間は給与の3分の2を補償することが義務付けられています。合計180日が最長支給期間となります。(*1:支給条件は、社会保険料の支払い状況、扶養家族数などによる)
*1 : フランス政府公式サイト https://www.service-public.fr/particuliers/vosdroits/F3053
雇用主には病欠の事実を確認する権利
雇用主は、給与を補償する代わりに、従業員が本当に仕事を休まなければならない状況にあるかどうかを確認する権利を持ちます。従業員は、雇用主が確認をしやすいように、病欠を連絡する際に保養する場所(自宅、別荘など)を連絡する義務があります。
雇用主は、任意の医師(雇用主が自由に選べます)を派遣して、雇用主の健康状態をチェックすることができます。派遣された医師が、従業員が仕事が出来ないほど重篤な状態ではないと判断された場合は、給与の補償を中止することができます。また、従業員が不在だったり、診察を拒否したりした場合も、給与の補償は中止されます。
日本人が休みを取らない理由
このように、フランスでは、病欠時の給与保障が、有給休暇の制度と別に管理されていることで、結果的に有給休暇の取得率を上げていると考えられます。
一方、日本では、「有給休暇5週間のフランスのバカンス事情」の記事でも書いた通り、病気や怪我で休まなければならない時に備えて有給を貯めておく、という人が多いのではないでしょうか。
2018年の国際比較調査でも、「日本人が休みを取らない理由」として、「緊急時のために取っておく」が第2位となっていました(*2)。
<日本人が休みを取らない理由>
1位 人手不足
2位 緊急時のために取っておく
3位 仕事をする気がないと思われたくない
*2 : 2018年12月10日 Expedia 調査
フランス式の病欠制度の弊害
このフランスの制度を体験してみると、制度の弊害を感じる部分もあります。
風邪で熱が出た時など、一日寝ていればすぐに治るのに、会社に病欠証明書を提出するために医者に行かなければならなくて、かえって治るまで長引いてしまうこともあります。ズル休みでないということを証明するためだけに診察に行かなければならないのは、なんだかな~と思ってしまいます。
ただ、この制度を悪用してズル休みをするツワモノもいるようですので、チェックシステムは必須なのだと思います。
そのような例を身近で見たことはありませんが、テレビのドキュメンタリー番組で、ズル休みをして補償を受けている人を見たことがあります。何ヶ月も休んだ挙句、医師が診察に来ても薬局に行っていたなどと言い訳をしている人の様子を取材していました。もちろん、こんなケースは例外的だと思いますが、どれだけ図々しいんだと思ってしまいます。
このように、フランスの制度も完璧ではなく弊害もありますが、病気や怪我の時の心配をしないで済むことは、緊急時の心配なく有給休暇を取れることにつながり、従業員に安心感を与えられる制度だと感じます。