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有給休暇が8週間!35時間法の光と影【フランス人の働き方と休み方 3】

 

悩んでいる人
フランスでは有給休暇が8週間もあるってホント?なんでそんなことが可能なの?

 

こんなお悩みを解決します。

 

  • 本記事の内容

・8週間の年次有給休暇

・フランスの35時間労働法とは?

・35時間法の光と影

 

  • 本記事の信頼性

 

フランスでは、約40年前から、「35時間法」という法律により法定労働時間が週35時間に定められています。この法律により、実質8週間の年次有給休暇を謳歌しているフランス人が多いです。

日本の状況から見ると、信じられない日数の有給休暇ですよね。私の体験談をお話します。

日本とは対極にあるように見えるフランスでの実情を知ることで、新たな発見があるかもしれません。ぜひこの記事を最後まで読んでみて下さい。

 

日本の働き方や休み方も変革期に入り、疑問に思うことも多いかと思います。海外の事情を知ることで、自分の働き方を考えるきっかけにしていただけたら嬉しいです。
Kana

 

週35時間労働法

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フランスでは、現在、法定労働時間は週35時間に設定されています(弁護士、医師など専門職は除く)。この、通称「35時間法」と呼ばれる法律は約20年前の2000年2月施行となりました。

それ以前には、1936年に週40時間、1982年に週39時間、そして、2000年に週35時間(20人以下の小規模事業所は2002年)に短縮されました。

日本と比べると、現在の日本の労働基準法で定められた法定労働時間は週40時間なので、日本の今の労働時間はフランスの40年近く前(1982年まで)と同じ労働時間になります。

注:「週35時間」は、それ以上は割り増し賃金が発生するという意味の標準時間で、それとは別に、「それ以上の労働を禁止する」という上限時間として、週48時間が設定されています。

 

「有給休暇8週間」は本当か?

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労働時間は週35時間に短縮されましたが、多くの企業では、仕事の都合上、従来通り週39時間で運営しています。その超過分として、年間15.2日(3週間)をまとめて代休として取ることで時間調整をしています。

この時間差分を、RTT(La Réduction du Temps de Travail 労働時間短縮)と呼び、有給休暇の5週間とは別に、RTTの3週間を取る形となっています。

このため、「有給休暇5週間」の記事で書いた通り、大企業では、国の法律で決まっている有給休暇5週間と、RTT3週間で、合計8週間の年次有給休暇を定めている会社が多いです。

実際、私の勤めていた会社では、社員全員が、毎年8週間の年次有給休暇を取得していました。

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35時間労働法の目的

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そもそも、35時間労働法はどのような目的で制定されたのでしょうか。

35時間労働法の目的は多岐にわたりますが、主には下記の3点です。

  1. 失業対策・労働分配  :   労働時間を削減することによって、総仕事量を多くの国民に分配し、失業率を下げる
  2. 労働組織の効率化 :  各労働者と組織の効率化と、それによる経済生産性の拡大
  3. QOL改善・健康状態改善 :  家庭生活・社会の一員としての生活を改善するための余暇を増やす。それにより健康状態を改善し、医療費の削減につなげる。

 

35時間労働法の成果は?

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「労働時間の短縮により、ワークシェアリングを通して雇用の創出を促すとともに、仕事と生活の調和が可能になる」、と喧伝されて始まった35時間法ですが、経済面・社会面での効果はどうだったのでしょうか。

雇用の創出

35時間労働法によって、35万人の雇用が創出されたと言われています。ただ、他の要因による効果だと言う研究者もいて、意見が分かれるところです。また、当初の目標は、70万人の雇用創出だったので、その意味では、効果は限定的だったのではと考えられています。

35時間法により、正規(CDI 無期限雇用)ではなく、非正規(CDDなど期限付き雇用)が増えてしまったという調査結果もあります。雇用機会が増えても、新規採用は企業にとってはリスクが高く、正規(CDI 無期限雇用)採用に直結する結果にはならなかったと見られます。

フランスの労働法の条件下では、一度雇用すると解雇が難しく、フランスの企業が新たな雇用にしり込みしてしまったため、結果的に慢性的な高失業率は期待したほど改善されなかったという見方が一般的です。

 

従業員へのプレッシャー

35時間法によって、減らされた労働時間を取り戻すために、企業は更なる結果を求めることとなり、これが従業員への強いプレッシャーとなっています。国の調査でも、「短縮された時間内で以前と同じ量の業務をこなさなければならない」、「仕事の兼務が増加した」と答えた従業員が4割以上となりました。

私の実体験からも、期限中に仕事を終わらせなければならないというプレッシャーが非常に強いと感じていました。また、年度末に近くなると、人事部から、早く有給を消化するようにという催促が強くなることも、強いプレッシャーとなりました(贅沢な悩みではありますが)。会社の立場から見ても、社員に年度内に有給を取得させなければ違法となってしまうので、これだけ多くの有給を100%取得させるのは、かなり高い管理能力が要求されます。

 

出生率の増加

35時間法によって、社員のプライベート時間が増えたのは間違いなく、家族で過ごす時間が多くなりました。

あきらかな変化として、35時間法の施行と同時期に、フランスの出生率が大きく回復しました。フランスの出生率は、90年代前半に1.66まで落ち込んだ後、2006年には2.0を達成するまで回復し、少子化対策の成功例として注目を集めています(*1)。

直接の因果関係を証明するのは難しいですが、35時間法によって家族で過ごす時間が増えたことにが、出生率の回復に寄与したと見られています。

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*1 :フランス国立統計経済研究所(Insee)https://www.insee.fr/fr/statistiques/3303349?sommaire=3353488

35時間法の今後は?

35時間法については、当初の目標に対して効果は限定的だったとする見方が多く、現在は労働時間を延長する方向の意見が強いようです。ただ、一度獲得した権利をフランス人が手放すとは思えず、すぐに変わることはないのかなと思います。

 

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