こんなお悩みを解決します。
- 本記事の内容
・フランスで働くために必要な学歴
・フランスで働くために必要な職歴
・フランスで働くために必要なフランス語力
- 本記事の信頼性
今回は、フランスで就職するために必要な条件についてお話します。日本人がフランスでの就職活動で損をしないために、まずはフランスの状況を理解することが大事ですので、フランス事情の説明も合わせて、ぜひこの記事を最後まで読んで役立てて下さいね。
注意ポイント
この記事では、オフィスワーク系の職種についてのお話をしています。料理や芸術系などの専門性の高い職種については、条件が全く異なりますので、その道の専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
フランスで働くために必要な学歴
フランスは超学歴社会
フランスで就職活動をするにあたって、フランスは2つの点で、「超」が付く学歴社会だということを理解しておいた方が良いと思います。1点目は、グランゼコール(後程説明します)が特別扱いされるということ。2点目は、学歴によって、将来の職種・収入が確定してしまう格差社会だということです。
フランスには大学入試がない。でも進級・卒業基準は厳しい
まず、高校生は卒業時に全国一律の高校終了資格試験を受け、合格すると大学入学資格を得られます。バカロレアと呼ばれるもので、日本のセンター試験に近く、通常「Bacバック」と呼ばれます。
日本のような大学ごとの入学試験はなく、バックに合格した学生は、だれでも国立大学に入れることになっています。各学生が希望の大学を提出し、居住地、先着順、抽選などで振り分けられるシステムとなっています。
大学に入学するのは比較的簡単ですが、進級基準は非常に厳しく、医学部の学生で2年生に進級できるのは2割前後、全学部で見ると2年生に進級できたのは41.6%のみ(*1)となっていて、日本とは比較にならない厳しさです。
(*1)2016年データ。出典:Le Monde 2017年11月21日
フランスのエリートは大学に行かない
フランスには、大学とは別に、グランゼコール(Grandes Ecoles)という、大学院に相当するエリートコースがあり、各界の幹部養成のための難関高等教育機関となっています。大企業の幹部や、歴代の大統領のほとんどは、グランゼコール出身です。
グランゼコールを卒業していると、入社後すぐにマネージャーになったり、その後の出世のスピードもずっと速かったりします。もちろん、入社時の給与のレベルも違います。グランゼコールかその他の大学かで、待遇が大きく変わってきます。また、グランゼコールの中でも分野ごとに明確なランキングがあります。
「グランゼコール出身かどうか?どのグランゼコール卒業か?」が、一生を左右すると言っても過言ではありません。(グランゼコールについては、下記の記事を読んでくださいね。)
<「グランゼコール」の記事にリンク>
日本の大卒はフランスの高卒 ?
日本とフランスのシステムの違いで、特に注意しなければならないのが、日本の大卒はフランスでは高卒扱いになってしまうということです。どういうことがご説明します。
フランスには3種類の学位があります。バカロレア(大学入学国家資格。日本のセンター試験に近い。通常「Bacバック」と呼ばれる)の後に何年履修したかで学歴レベルの違いを表します。
la licence(リサンス) | 学士、3年間の高等教育(通称Bac+3) |
le master(マスター) | 修士、5年間の高等教育(通称Bac+5) |
le doctorat(ドクトラ) | 博士、8年間の高等教育(通称Bac+8) |
フランスと日本では就学期間の違いがあるため、日本の4年制大学卒の人がフランスで就職しようとした場合には、「Bac+5」ではなく「Bac+3」と見なされてしまいます。
また、多くの企業では、専門職に採用する学歴条件を「Bac+5」以上とすることが多いので、給与体系が「Bac+5」以上と「Bac+3」以下で大きく異なります。これは、多くの企業が、「Bac+3」を高卒と同じカテゴリーとする給与体系を運用しているためです。
このように、日本とフランスの学歴システムの違いによって、日本の大卒の人が「割を食う」形になってしまい、悔しい思いをしている日本人を多く見てきました。今後、フランスでの就職を考える場合には、この点も考慮に入れて、学校・進路選びをされることをお勧めします。
フランスは学歴社会&格差社会
フランスでは、それぞれの学歴のレベルによって将来のコースがほぼ確定してしまうので、学歴自体を変えない限り、コースを変えることが難しいシステムになっています。
日本も学歴社会とは言え、「中卒から叩き上げて社長になる」というような話を耳にすることがありますが、フランスではそのようなサクセスストーリーはあり得ないということです。
また、それぞれのレベルによってキャリアアップのスピード・可能性も違うので、学歴の違いが、一生の収入の違いを確定してしまいます。
専攻分野と違う職種にはつけない
フランスの企業は、即戦力を求めるため、専攻内容と希望職種が一致している必要があります。例えば、文学部を卒業した人が金融機関で働くということは、ほぼあり得ません。
専攻を選ぶ時に、将来どのような分野で働きたいかを考えた上で決めないと、就職活動をする際に、大変な苦労をすることになります。
フランスの学歴 > 外国の学歴
フランス企業の採用状況を見ていると、外国のどんな名門大学を出ていても、フランスの学歴の方が高く評価されているような印象を受けます。採用担当者は、履歴書で「Bac+3」なのか、「Bac+5」なのかはチェックしますが、外国の大学のレベルまで確認する採用担当者はあまりいないと思います。
極端なことを言うと、東大卒でも、「Bac+5」でないために「Bac+3」とカウントされ、高卒と同じ扱いをされかねないということです。
このような事情から、フランスでの就職を目指す場合は、最終学歴をフランスにする方が有利に働くと思います。
フランスでの就職に「絶対必要な学歴」というものはありませんが、これまで見た様に、フランスが超学歴社会だということを理解したうえで、出来るだけ有利に就職活動を進められるように準備することをお勧めします。
フランスで働くために必要な職歴
「フランスには新卒採用はない!」の記事でも書いた通り、フランスの企業は「新卒」「転職」にかかわらず、即戦力を求めるため、応募するポストに近い職歴を既に持っていることを要求されます。
フランスでは転職をするのは一般的になっていて、日本よりも労働市場の流動性は高いと言えますが、実際は、同じ仕事内容でA社からB社に移動する、というタイプの転職がほとんどです。
日本で職歴のある方がフランスの企業に転職したい、という場合、応募するポストの仕事内容を日本で経験していて既に実績がある、というケースでないとなかなか難しいと思います。
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フランスで働くために必要なフランス語力
残念ながら、フランス語は必須です
業種・職種によって例外はありますが、ほとんどの場合、ビジネスレベルのフランス語が求められます。業務や同僚との会話はフランス語のみの職場がほとんどで、英語でOKという職場は非常に少ないです。
「フランス語ができなくても就職できる」という話を聞くことがありますが、足元を見られて悪い労働条件を受け入れざるを得ないことになるので注意が必要です。
企業の立場から見れば、圧倒的な買い手市場の状況の中で、フランス中を探しても見つからないほどのよほど高度な能力の持ち主でない限り、あえてフランス語がわからない人を雇う理由はないわけです。
必要なフランス語レベルの見分け方
フランスはもともと文書を重視する文化があり、そればビジネスレベルにも影響しています。ビジネスの場面で、職場での同僚との会話や会議での「話すフランス語」も大事ですが、メールや文書による「書くフランス語」の方が重要視されることが多いです。
外国人の場合、メールの内容がある程度きちんとしていれば、フランス語の発音に多少難があったとしても、大目に見てもらえると思います。私もフランスで働き始めたころ、ちょっとしたミーティングでも率先して議事録を作って同僚にメールしていました。理解不足や誤解を避けることにもなり、とても助けられました。
フランスで就職したいという方から、どのくらいのレベルのフランス語が必要か、と聞かれることが多いのですが、実践に即して必要性を判断することをお勧めします。仏検やDELF, DALFを基準にするよりも、仕事で日本語で書いているメールを、すべてフランス語で書くことができるか試してみると良いと思います。書けなければ、書く訓練をすることをお勧めします。