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フランス人は残業をしない、は本当か?【フランス人の働き方と休み方 4】

 

悩んでいる人
フランスでは残業はないって本当?海外の残業の実情を知りたい。

 

こんなお悩みを解決します。

 

  • 本記事の内容

・フランスで働いたらストレス激減

・【実態調査】フランス男性の半数は7時前には帰宅

・仕事に対する考え方の違い「働くために生きるのではなく、生きるために働く」

・残業に対する考え方の違い「残業するのは仕事ができない人?」

・例外としての「管理職(カードル)」

・フランス人も残業するが、日本人のような働き方は絶対しない

・まとめ フランスの時間当たり労働生産性は日本を6割近く上回る

 

  • 本記事の信頼性

 

最近日本では、「仕事の効率化」や「ワークライフバランス」の観点から、海外での働き方に関心が高まっています。残業事情についても、日本と対照的な例として、フランスでの働き方が引き合いに出されることが多いようです。

フランス企業での実体験から、実際のところはどうなっているのか、フランスでの残業の実情をご紹介します。

 

日本の働き方や休み方も変革期に入り、疑問に思うことも多いかと思います。海外の事情を知ることで、自分の働き方を考えるきっかけにしていただけたら嬉しいです。
Kana

 

フランスで働いたらストレス激減

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日本の大手企業を退職し、フランスでのMBA留学を経て、フランス企業に転職しました。

フランスで働き始めて、同じ業界、同じ職種なのに、仕事のストレスは格段に減りました。転職してからの方が、責任範囲は広くなったので、ストレスが増えると思いきや、まったく逆でした。

日本で働いていた頃は、10時ころまで残業するのは当たり前、終電後にタクシーで帰宅することもあり、定時に帰ることは考えられない職場の雰囲気でした。いつも疲れていて眠かったような気がします。

一方、フランスの職場では、出張前後の忙しい時期を除けば、6時以降オフィスにいることはほとんどありません。平日の帰宅後に自分の時間を確保できることで余裕ができ、心身ともに健康になって、生活の質が上がりました。

日本で働いていたころに、仕事のストレスだと思っていた原因の大部分は、仕事そのもののストレスではなく、仕事の仕方によるストレスだったことを、フランスで働き始めてから理解しました。

日本とフランス両方の働き方を経験して、働く国が変わるだけでここまで違うという体験は衝撃的でした。

 

【実態調査】フランス男性の半数は7時前には帰宅

下記の内閣府の調査を見ると、私の体験が例外でないことがわかります。

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(出典:内閣府経済社会総合研究所編「フランスとドイツの家庭生活調査 2004年」)

 

日本とフランスでの、平日の帰宅時間を調査したものですが、日本男性の帰宅の6割以上が8時以降になっているのに対し、フランス男性はなんと、半数以上が7時前には帰宅しています(帰宅が8時以降になる人は3割以下)。

女性については、仕事をしている女性の半数以上が6時前には帰宅しています。(フランス女性の就業率は高く、80%を超えます。)

フランスでは、男女含め、大多数が7時には帰宅している様子がうかがえます。同僚や友人たちの生活を見ていると、実態に近い調査結果だと思います。

 

この大きい違いはどこから?

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このように日仏の生活リズムがかなり違う原因として、主に3つの違いが考えられます。

・仕事に対する考え方の違い

・残業に対する考え方の違い

・雇用形態の違い「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」

 

仕事に対する考え方の違い「働くために生きるのではなく、生きるために働く」

「働くために生きるのではなく、生きるために働くべきだ。(Il faut travailler pour vivre, non vivre pour travailler.)」とは、Bernard Willems-Dirikenの名言で、フランスでとても良く引用される表現です。プライベートを優先する、フランス人の人生観・仕事観をよく表しています。

プライベートの事情で仕事に支障をきたすのはプロ意識に欠ける、とみなされる日本とは大違いです。

日本では、私生活を犠牲にしてでも仕事を優先するのが一人前の社会人とされますが、フランスでは、大切にすべき私生活がないような人は、人間的でなく、魅力に欠けると考えられるのが一般的です。

 

残業に対する考え方の違い「残業するのは仕事ができない人?」

日仏の違いで、特に顕著なのが、残業に対する考え方の違いです。

日本では、残業をすることは美徳で、会社への忠誠心の表れとして捉えらえる傾向がありますが、フランスでは正反対のとらえ方をされています。

フランスでは、連日残業をしている人は、「能力が低い」「要領が悪い」というレッテルを貼られかねません。時間内にきっちり成果を出す人が高く評価され、いつも会社に遅くまで残っているような人は、上司から褒められるどころか、仕事が出来ない部下として敬遠されてしまいます。

残業に対する考え方 よく聞くセリフ
日本 残業をすることは美徳。会社への忠誠心。

忙しいことが自慢。プライド。

残業を沢山しているのは頑張っている証拠。

「残業が終わらなくて、職場で徹夜しちゃってさ」「昨日は終電だったよ」

「仕事が多くて残業が終わらない」

「忙しくて昼ご飯を食べる時間なんてないよ」

フランス 残業は、どうしても仕事が終わらない場合の最終手段。 「いつも残業している人は、要領が悪い、仕事ができない人」

「残業ばかりしていると、能力がないようで恥ずかしい」

 

エピソード

日本人とフランス人の混合メンバーでプロジェクトを進めていた時、残業に対する考え方の違いで誤解が生じてしまったことがありました。

ある日本人スタッフが自慢気に、自分がこのプロジェクトのためにどんなに残業をしているかを、他のプロジェクトメンバーたちにアピールしていました(仕事熱心な日本人にありがちですよね)。これを見た、プロジェクト責任者のフランス人役員に、「あの人は有能だと思って、プロジェクトメンバーに指名したが、能力不足で時間内に成果を出せないなら、メンバーから外した方がよいのではないか。」と相談されてしまいました。

私は、日本側とフランス側の間を取り持つコーディネーター的な立場でもあったので、双方に文化的な違いを説明して誤解を解かなければなりませんでした。

フランス人と日本人の残業に対する考え方が正反対であることを痛感した経験でした。

 

雇用形態の違い ジョブ型雇用が「残業なし」を可能にする

メンバーシップ雇用が基本となっている日本に対し、フランスでは、ジョブ型雇用が主流となっているので、それぞれの仕事範囲がジョブディスクリプションで明確に定められています。

ジョブディスクリプションで定められた勤務時間を超えて働かせることは契約違反になるので、フランスでは基本的に残業はありません(管理職は例外)。

日本の職場だと、自分の仕事が終わっても、上司や同僚が残業をしていたら帰りづらい雰囲気があると思いますが、フランスでは、自分の仕事をこなしていれば、ほかの人に気兼ねすることはありません。

また、転職が多いことからも、フランス人は会社への帰属意識は薄く、会社(上司)と合意したジョブディスクリプションのターゲットを達成することにしか興味がありません。会社側も、ジョブディスクリプションで定義した以外のことを従業員に求めません(求めることは契約違反になります)。

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「ジョブ型」「就職活動・ジョブディスクリプション」の記事にリンク

 

例外としての「管理職(カードル)」

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このような状況のフランスで、例外といえるのが「管理職(カードル)」の人たちです。

フランスには2つの異なる雇用形態があり、「管理職」と「その他・非管理職」に分かれます。(詳しくは「フランスの大きく異なる2つの雇用形態。管理職か非管理職かが大きな違い」の記事をご覧ください。)

「管理職」の場合は、成果主義の雇用契約なので、契約で定められた成果を出さなければなりません。契約の中に「残業」という概念はなく、残業をしても残業代が払われるわけではありませんが、求められた成果を出すために残業をしなければならないこともあります。

「管理職」の中には、キャリア重視でバリバリ働く超エリートもいますが、それでも日本のように慢性的な残業をする人は限られています。

 

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フランス人も残業するが、日本人のような働き方は絶対しない

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フランス人が残業する時は、下記のように「管理職」か「非管理職」でかなり状況が異なります。ただ、成果主義の「管理職」であっても、フランス社会全体で共有されている仕事や残業に対する考え方が有効なので、日本人のようなエンドレスな残業にはなりにくいです。(参照:「フランスの大きく異なる2つの雇用形態。管理職か非管理職かが大きな違い」

制度 実際の状況
Cadre カードル(管理職)※

(いわゆるエリート層)

・規定労働時間は週35時間だが、成果主義の労働契約。

・契約によって、成果に対するボーナスはあり得るが、残業しても残業代はない。

・自分の責任範囲を自分の裁量でこなす。

・キャリア重視でバリバリ働く人もいる。

・それでもエンドレスな残業は絶対しない。

「フランスの裁量労働制」にリンク

Non-Cadre ノン・カードル(非管理職)

(スタッフ職)

・基本的な労働時間は規定の週35時間で、それ以上働く場合は、残業代が出るか、休暇を取れる。

・スタッフ職で、決められた範囲の仕事をこなす

・基本的に残業はしない。

・どうしても必要な場合は、例外的に残業することもある(期末の忙しい時期など)。

・会社は従業員に事前に了承を得て、残業時間分は残業代か代休で補填する。

※「管理職(Cadre)」はフランスの労働人口の18.4%(*1)

また、男女問わず、仕事帰りに子供を迎えに行く時間が決まっている人が多く、従業員に残業を頼む場合にも事前の調整が必要です。子供の送り迎えを父親と母親で朝と夜を手分けしている家庭が多いので、子供を迎えに行くのは、女性に限らず男女半々くらいの印象です。

夜の付き合いの飲み会は皆無で、歓迎会や送別会など部署の懇親会的なものは、夜ではなく昼休みに行われることが多いです。平日でさえ、このように仕事とプライベートの線引きがはっきりしているので、休日に仕事のゴルフなどはありえない環境です。

*1 : « Une photographie du marché du travail en 2018 »フランス国立統計経済研究所(Insee)https://www.insee.fr/fr/statistiques/3741241#tableau-Figure4

 

フランスで管理職を経験して

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日本企業とフランス企業を両方経験して、フランスの管理職は成果主義で厳しい面があり、残業もゼロではありませんが、それでもやっぱりフランス企業の方が、ストレスが格段に少ないことを実感しています。

ストレス減の理由1:ジョブディスクリプション

自分の守備範囲と目標がジョブディスクリプションで明確に定めてあるので、仕事の成果さえ出していれば、自分のペースで仕事を進められる。早めに切り上げたり、まとめて残業したりも可能。職場の雰囲気や上司の顔色を伺う必要がなく、帰りたい人はさっさと帰れる。

(「ジョブディスクリプション」の記事にリンク)

ストレス減の理由2:「残業なし」が基本の仕事環境

非管理職が労働人口の8割以上を占めるため、非管理職の働き方(残業なし)を前提とした職場の雰囲気がベースとなっている。日本のように、皆が残業をするのが当たり前の働き方をしているわけではないので、管理職といえども定時で帰ることに違和感がない。

ストレス減の理由3:フランスの人生観・仕事観

管理職としての成果主義の厳しさはあっても、フランス社会全体として私生活優先の人生観・仕事観が背景にあるので、上司や同僚、取引先が、お互いの私生活を尊重し合う。

ストレス減の理由4:労働環境の整備

裁量労働制のデメリット(長時間労働が常態化してしまうリスクなど)を抑制する労働環境が整備されているので、慢性的な長時間残業になりにくい。

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まとめ フランスの時間当たり労働生産性は日本を6割近く上回る

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フランス人の、私生活を優先した働き方を見ると、労働生産性は大丈夫なのか?と心配になってしまいますが、実は、フランスの時間当たりの労働生産性は、日本を6割近く上回っています。一人当たり労働生産性でも、フランスが日本を5割上回っています。(*2)

労働生産性を考えると、日本の働き方は、残業の仕方を含め、簡潔にできる部分が多いのかもしれないと思ってしまいます。

 

Check!

OECD(経済協力開発機構)の調査(2020年)によると、1時間当たりの労働生産性は日本が47.9ドル。これはOECD加盟諸国37カ国中21位です。対してフランスは77.4ドルで6位。

また、日本の一人当たり労働生産性は、81,183ドルで26位。フランスは121,987ドルで7位。(*2)

また、残業のありかたや労働生産性は、幸福度にも影響を与えます。2020年の「世界幸福度ランキング」によると、フランスの24位に対して日本は62位となっています。(*3)

世界保健機関WHOによるメンタルヘルスの定義でも、「生産性が高い状態で働くことができ、コミュニティに貢献できる幸福な状態」と記述されているように、働き方と幸福度は密接に結びついています。(*4)

 

Check!

「メンタルヘルス」とは (WHOによる定義)

個人が自分の能力を発揮でき、日常のストレスに対処でき、生産性が高い状態で働くことができ、コミュニティに貢献できる良い状態。

Mental health is a state of well-being in which an individual realizes his or her own abilities, can cope with the normal stresses of life, can work productively and is able to make a contribution to his or her community.

フランスの労働生産性や幸福度も世界トップとは言えませんが、日本とは対照的な点が多いだけに、日本の働き方・残業のありかたを考え直すヒントになるかもしれません。

 

*2 : 日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2020」https://www.jpc-net.jp/research/list/comparison.html

*3 : 国連 « World Happiness Report 2020 » https://worldhappiness.report/ed/2020/#read

*4 : WHO « Mental health: strengthening our response » https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/mental-health-strengthening-our-response

 

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